渡邉武夫《丘の道》定点観測

2020.08.23更新
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渡邉武夫 《丘の道》 1963年 油彩、カンヴァス

渡邉武夫(1916~2003)
若くして傑出した才能を開花させ、中央画壇で確固たる地位を築きながら、地元・埼玉の美術発展にも大きく貢献した、本市ゆかりの重要な画家の一人です。
肖像画の要諦をよく掴んだ人物像で画壇に颯爽と登場し、戦後は渡欧体験を経て風景が制作に転じます。
その後も徐々に作風を変化させ独自の絵画表現を追求しながら、日本芸術院や日展顧問、光風会理事長等、名誉あるポストを歴任する等、洋画壇をリードしました。

作品について
渡欧体験を経て、改めて日本の風土を見つめ直した時期、かつ画面構成を問い直しはじめた時期のさいたまの風景を描いた秀作です。
線を多用し、構図にこだわる画家の厳しい追及の眼、伸びのあるタッチ、柔らかな赤色や青色の木々の枝ぶり、丘の道のアイボリーベージュ等、ソフトで微妙なニュアンスをもつ色彩の組み合わせの中に、渡邉特有の情感が生まれています。

2018年1月撮影(県立浦和商業高校前)

岸町小学校と浦和商業高等学校の間の坂道を、西へ向かって描いた作品と思われます。
画面奥の豊かな自然は失われ、現在は住宅地となっていますが、左にのぞく高校の壁は今も同じ場所で目にすることができます。
うらわ美術館から自転車で約5分。
美術館からゆるく坂道を下りながら県庁方向へ。
その後は南へ南へとまっすぐ、徐々に坂を上っていきます。
目的地の最後に通るのが「木遣坂(きやりざか)」。
住宅街の中にある見通しが効く美しい坂道です。
この辺りは「岸町」の名のとおり大宮台地の縁(へり)にあります。
坂がとても多い地域で、散策をすれば台地とその谷間のアップダウンを楽しむことができます。
(タモリさんにもおすすめ)
木遣坂を上りきった正面には、浦和商業高校の正門があります。
この正門前から西を向いた風景が、作品に描かれています。
左手に見えるのが、浦和商業高校の正門の赤レンガ。
赤レンガの先はコンクリート×石造りの塀のようです。

立っている場所から下り坂になっています。
坂の上から下へ、西に向かって見た風景。
塀を坂の中腹から上へ、東に向かって、見た風景。

手前がコンクリート打ちっぱなしのような造り。
奥は四角形の石造りのように見えます。
作品に描かれているのは、手前の風合いに近いように感じました。
この坂をまっすぐ下って、遠くに見える(写真じゃ見えにくいけど)JR武蔵野線の陸橋辺りまで行ってみることにしました。

坂の上からしっかりと見えていたはずの陸橋が、実際行ってみると思っていたより遠い!
アップダウンも結構ありました。
(途中、別所沼から武蔵浦和まで続く「花と緑の散歩道」を横切るコースで、なかなか気持ち良かったです。)

見通しの良いまっすぐな道と、豊かな起伏によって、
遠景までしっかりはっきりと見え、遠近感が若干狂うのでしょうか。
この場所特有の風景が画家の心をとらえたのかもしれないなと、実際に行ってみて感じることができました。
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